ルーモブックス&ワークスの店主が気になった古本をつれづれに紹介する「古書古書バナシ」。
古書に限らず、新しい本や仕入れた状況などについてもアレコレと語ります。

【vol.1】「パイプ 七つの楽しみ」

梅田晴夫/平凡社カラー新書 1976年発行

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先日大阪に行った折に初めて訪れた古書街、梅田駅近くのガード下「阪急 古書のまち」で入手した一冊。
パイプ愛好家の著者がパイプについてアレコレと書いた、いわばウンチク本です。 

よほどのタバコ好きの蔵書だったのか、ただ古いだけか、全ページが黄色くヤケており、
全体的にヤニっぽさが漂うまさに本のタイトルにピッタリの風情ある古本です。

世間全体が禁煙・嫌煙へと傾いているなか、いまだ私は喫煙者ですが、さすがにタバコをパイプで吸ったことはありません。女性はもちろんのこと、男性でも、今どきパイプを吸っている姿というのは殆ど見かけませんね。
私がカフェなんかでパイプを懐から取り出してタバコの葉を詰め、おもむろに火をつけてくゆらせようものなら、きっと奇異の目で見られる事は間違いありません。
日本においては昔の文豪や芸術家なんかだとベレー帽にパイプを持っているような絵ヅラも浮かんできますが、この現代ではすっかり廃れてしまった文化の一つかもしれません。

さて、そんな一見何の縁もなさそうなこの本、なぜ私が手にとったかというと、
ずばり、パイプそのものの造形にひじょうに興味を惹かれたからです。

欧米(とくに北欧で盛ん)には「パイプ作家」なるものがいて、各々特徴のある素材やデザインで制作されたパイプは、中には何十万という値がつくものもあり、パイプ愛好家やコレクターから一つの芸術品として珍重されています。

ただ火皿にタバコの葉を詰めて吸うだけのものに、様々にフォルムのバリエーションがあるという不思議さ。
木を削って磨いてつくられた光沢を帯びた丸みのある火皿部分に対し、 ボディから吸い口にかけてスッと細くなっていく部分は優美な曲線や直線を描いています。こんな小さな道具の中に、計算された機能美が完璧なバランスでひそんでいるように思えて、グッときます。

70年代の日本においては「パイプ スモーキング コンテスト」なるイベントも行われていたとのこと。
男性の嗜みのひとつとして、パイプ愛好家がしっかりと地位を築いていた時代があったんですね。
そのコンテストのルールとは、
「同質、同分量のタバコを規定時間内にパイプに詰め、同時に着火する。使用するマッチは二本、最初の六十秒以内に着火を終わる。上から吹いてはいけない。最も長く喫った者を優勝とする」 という、何を競っているのかいまいちよくわからないもの。
つまり、着火は素早く、そして長々と吸う、というのがパイプのマナーとしてカッコいいことだったのでしょうか。

世界でただ一人の女性パイプ作家、デンマークのアンネ・ユリエの工房と制作過程も紹介されています。
彼女は世界的に有名なパイプ作りだった夫、ラスムッセンの死後に跡をついでパイプ作りになったという、変わり種。
昔、この女性のドキュメンタリーをテレビでみた事があり、強烈な印象で覚えていたので、この本に出てきてすごくテンションがあがりました。中年を過ぎた年齢で一からパイプ作りを始めた彼女は、夫の作品をしのぐ独創的なパイプを次々と生み出し、瞬く間にその世界で名を知られるようになりました。

この本ではその制作過程が丁寧に解説してあり、このページだけでもこの本を見つけた甲斐があるというもの。私もオリジナルのパイプを作ってみたい…。でもうまく作れても市場が全然なさそう…。
くわえパイプ姿のアンネ・ユリエの写真が掲載されているのですが、こんなにパイプが似合う女性はなかなかいないでしょう。こんなおばちゃんになりたいですね。

さて、パイプにまつわる資料以外の本文はというと、70年代という時代性もあるのか、やたらと「男のたしなみ」「男の生き様」「女には理解できないし、してもらいたくない男の世界」等々、現代ならフェミニスト達からバッシングされそうなジェンダー問題発言が頻繁に登場、そして「くゆらせ方にもマナー」とか「〜するのはパイプをわかってない」など、視野の狭いオタク論が延々と続き、
6回の結婚をしたというこの著者、パイプオタクがマッチョ風を吹かせているといった印象で、まったく共感をおぼえませんでした。
「パイプ 七つの楽しみ」とタイトルにありますが、七つがなんだったかはもうどうでもいいや、という感じです。

けれど、サー・ローリー郷が断頭台までパイプをくわえていた、というような歴史が絡むエピソードの数々が紹介されていたり、パイプの構造と仕組みが詳細に図解してあるなど多岐にわたって情報が網羅されていること、そしてなんといってもこの「カラー新書シリーズ」ならではの豊富なカラー写真資料がたくさん掲載されていることがこの本の魅力です。

最後に、私がもっとも好きなアーティスト、ジョゼフ・コーネルの作品にもパイプが頻繁に登場しています。
パイプの造形美に惹かれる人には、DNAに刷り込まれた共通意識のようなものがあるのでは。。などと考察を重ねつつ「そうだ、こんどはパイプをコラージュ作品のモチーフに使ってみよう」と思い立ったのでした。

本はあらゆるアイデアの宝庫で、読むことと探すことをサボってはいられませんね。
という訳で、今日も忙しい毎日です。

↑ 中身も少し見れますよ。カスタマーレビューも必見!


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