薦められたがりのイラストレーター小宮貴一郎が、誰かの好きなものをジャンルを問わずに教えてもらい、それにまつわる事や感想を書いていきます。

【第2回】タナカリョウスケさんから「荒野のダッチワイフ」


こんにちは。退屈をしています。小宮と言います。

第2回目はイラストレーターのタナカリョウスケさんに「荒野のダッチワイフ」を教えてもらいました。
2回目も映画になりました。何となく「荒野」で繋がっているのは偶然です。
作品の概要は、

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「荒野のダッチワイフ」

1967年/日本
監督/大和屋竺 製作/矢元照雄 脚本/大和屋竺 撮影/甲斐一 音楽監修/相倉久人(作曲/山下洋輔 演奏/山下洋輔カルテット)
出演/港雄一 山本昌平 辰己典子 麿赤児 大久保鷹他

あらすじ/不動産を営む町の権力者ナカが風采のあがらぬ殺し屋ショウに依頼した標的は、かつてショウの恋人を殺した仇相手だった‥

日本映画を変革した怪人、大和屋竺によるカルト的名作。殺し屋の妄想と現実が美しく交錯する不条理劇を、山下洋輔によるアバンギャルドなジャズが彩る伝説のハ ードボイルド・ムービー!(「amazon」内容紹介より)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

という事です。

 

偶然ですが荒野繋がりに続き、公開年も前回の「続・荒野のガンマン」と同じ1967年です。
あっちはカラー、こっちはモノクロなのは何ででしょうか?予算かな。
この映画は「ピンク映画」の括りに入っていて、このジャンルは予算の少ないものが多く、一時期のピンク映画は予算の都合で“濡れ場のみカラー”という作品もあったみたいです。1967年は完全にカラーが主流になる前でまだバラつきがあった頃なのかもしれません。

パッと見ただけでも色々とひっかかる部分が多い映画なので一つずつやっていきます、まずタイトル。「荒野のダッチワイフ」。何の事やらという感じですが、これは観ると意味がわかりました。内容と関係あります。「荒野」と「ダッチワイフ」それぞれの意味はわかりますけど、繋げるとすごいインパクト。(「ダッチワイフ」だけでもう‥という気もしますが)この中身が推測しづらいタイトルはこの映画の独特なジャンルの立ち位置を知って、ある程度納得できました。

さっきも書きましたけどこの映画は「ピンク映画」の括りに入っています。ピンク映画っていうのは映画会社が製作するポルノの事で、細かい定義はあるようですが性描写に特化したジャンルを指します。当たり前の事書いてるみたいですけど、ある世代から上には当然でも若い人は知らないかも知れない。ピンク映画も加藤茶の「ちょっとだけよ〜。」も知らない人になぜピンク=性描写なのか、簡単に説明できる自信は無いです。「紫の方がピンクだ」と言われたらそんな気もします。ブルーフィルムっていうのもあります。

それはともかく、この作品はピンク映画なのにも関わらず、性描写に特化“は”していません(出てはきます)。強いて言うなら「ハードボイルド」作品になると思います。
それなのになぜ「ピンク映画」に入れられているのか。調べてみてもこれを簡潔に説明するのは難しいんですけど頑張ってやってみます。
ざっくりいうと“そういう流れがあった”って事になるんですが。

ピンク映画は少ない予算と時間で作られていたのでスタッフも新人が多く、この人達には若い人特有の映画に対する強い憧れがありました。

より作品性の高い映画を作りたがる新人達にとって、ある意味フットワークの軽いピンク映画は自分たちの作家性を発揮するのに適した場所だったようです。
当然雇う側とのぶつかり合いはあったようですが、1950年代後半から始まった若い監督達によるフランス、日本のヌーベルバーグ作品の興行的な成功もあったので、今から考えるより当時は意外と寛容だったのかもしれません。
細かい部分の確証は持てませんがピンク映画出身の有名監督が数多くいる事からもわかるように、低予算だけど製作環境が比較的自由なピンク映画で画期的作品が生まれやすい流れのもと「荒野のダッチワイフ」という「ピンク映画の枠を借りたハードボイルド作品」が生まれました。とさ。

次に内容ですが、一応脚本の土台があって、それがアンブロウズ・ピアズの「アウル・クリーク橋の一事件」という短編小説です。(ここで読めました)

中身全然違うんですけど重要な部分が同じなので“大胆な解釈を持って”と注釈される事が多いようです。

この映画は、一人の殺し屋の復讐劇をベースに現実と妄想が入り乱れるストーリーなので「難解」と言われる事が多いようですが、細かい筋を気にしなければ案外解りやすいと思います。
解らない事は解らない事として、話自体はちゃんと描いてあるので全部観た後で追って大丈夫でした。
ストーリーを追い過ぎ無いのは、難しそうな映画を観る時にいい方法だなと思っています。頭の中で言語化するのを諦めると色んな事がすごく楽です。(そして、それを補うためにこうやって必死に下手な文章書いています。。)

他に大きな特色としてハードボイルド作品らしくセリフまわしが非常に格好いいです。観た後で「何でハードボイルドは格好いいのか」という疑問が沸いてきたので語源を調べたりしたんですけど、ハッキリとは解りませんでした。言葉の意味はそのまま「固く茹でた」で、固ゆで卵を指しますが「動じない様子」の事を指すんでしょうきっと。特徴は“暴力やモラルに反した事にも感傷や批判を加えず、客観的に描写する手法を用いる”と書いてあって、それが状況の説明が多いミステリに向いているのはわかりますが、なんで格好よく映るのかイマイチわかりません。
なのでとりあえず、ある描写の発明があって、それに「ハードボイルド」という名前と色々な肉付けがされていって今まで続いている、と片付けておく事にしました。本当に何でかな?でもこれ欧米人がやろうがアジア人がやろうがそれぞれ味ありますからスゴイと思います。女の人で好きな人少ないかもしれないですけど。

話を映画に戻して、全編を通したそういう男臭くて時代じみた描写を、山下洋輔カルテットによるジャズ演奏が盛り立てます。山下洋輔と言えばフリージャズの代名詞として語られる事が多いですが、この映画の音楽ではそれほど無茶苦茶に自由という感じではなく、映像と合わさるととてもヒリヒリする緊張感を感じました。というかこの映画全体がすごく緊張感ありました。ずっと喉が渇く様な。‥喉が渇く‥‥ゆで卵‥‥。

えー、そういうわけで第二回目もなかなか退屈してるヒマのない物を教えてもらうことができました。
今日はこれくらいに。

 

2_kouyanoda

次回は友達の三浦良介さんから「太陽礼拝(ヨガ)」です。

 

 


好きなモノを教えてくれる方を随時募集しております。私の好み、知っているかどうかは一切考えずに、場所、お店、本、曲、など「教えたい好きなもの」に「公開できるお名前/職業やSNSアカウント等のちょっとした情報」を添えてメールSNS、人づて等、なんでも結構ですので私までお知らせください。こちらで入手し、それにまつわる事や感想を書かせていただきます。退屈だから何か教えてください。お待ちしております。

コメント投稿

メールアドレスが公開される事はありません。

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)